AI時代の今こそ「寺子屋」に学べ。落ちこぼれを生まない教育法とは?
有名中学入試問題で発見する「江戸時代の日本」④渋谷教育学園幕張中学校〈後編〉
■落ちこぼれは生まれない、寺子屋の教育法
拙著「あり先生の名門中学入試問題から読み解く江戸時代(2015年)」にも書きましたが、明治維新後の「学校の教え方」と、江戸時代の「寺子屋の教え方」では、生徒の理解度に天地ほどの差が出ます。
寺子屋では生徒は360度、全員が自分の好きな方向を向いて勉強しますが、明治維新後の「学校」では全員が前方の先生・黒板を見て座ります。
そして寺子屋では師匠や先輩が、下の子たちがまだよく理解できない部分などを「わかるまで」教えてくれます。
ところが「学校」では先生が時間内に教える内容・量が決まっているため、それをこなすために生徒の理解度は無視せざるをえません。
理解できていないところを先生に当てられると、答えられなかったり間違えて恥ずかしい思いをします。すると、からかわれたりいじめられたりして勉強や学校を苦手に感じるようになり、結果として落ちこぼれが生まれてしまう。
このように生徒の体の向きだけで、理解度も含め、寺子屋と学校では心理的・理解度・勉学的にも大きく差があるのです。
■今も昔も良い師匠に生徒は殺到する。その条件とは?
江戸の町では寺子屋の先生やお師匠さんなどは「おししょさん、おっしょさん」と呼びます。「ししょう」とは発音しないんですね。
当然、父兄たちに「良い師匠だ」と人気がある師匠というのは存在します。
それは「字を上下逆さまから書くのが上手な師匠」です。
なぜ字を上下逆さまに書ける師匠が人気あったかというと、文机を挟んで向かいから師匠は字を書くから。つまり「上下逆さま」というわけなんですね。
次に「厳しい師匠」が人気だったようです。